Q:夫が浮気しているようです。慰謝料を請求するとすればどれくらい請求できますか。

A:典型的な貸金返還請求や売買代金請求などのケースとは異なり,精神的損害について慰謝料請求をする場合,請求者は,自分がどのくらいの精神的損害を被ったと感じているかに応じてある程度自由に請求額を設定することができます。ただし,その金額が実務の相場的な金額からかけ離れていれば,交渉はうまくいかないでしょうし,裁判を起こしたとしても請求額が認容されることはまずないでしょう。

 

実務上,不貞行為に関する慰謝料の算定において考慮される要素は様々です。以下,被害配偶者(原告)をX,不貞配偶者をA,不貞相手(被告)をYとして,いくつか裁判例をご紹介いたします。

①  東京地判平成14年10月21日

婚姻期間35年,不貞期間は14年間,YがAの子を出産し,Aが認知もしたというケースで,不貞行為の態様が極めて悪質だと認定され,2000万円の請求額に対して500万円の慰謝料が認容された。

②  東京地判平成16年2月19日

婚姻期間20年,不貞期間は2年,不貞についてAに主導性が認められるものの,YがAの子を出産した後も生計をAに依存しているというケースで,Yの責任は軽視し難いとして,2000万円の請求額に対して300万円の慰謝料が認容された。

③  東京地判平成21年3月11日

婚姻期間17年,不貞期間は4年というケースで,XとAの間に未成年子が存在することやXが心療内科に通院したことなどの一切の事情を考慮して,1000万円の請求額に対して400万円の慰謝料が認容された。

④  東京地判平成25年3月11日

婚姻期間16年,不貞期間7か月,未成熟子2人というケースで,主たる責任を負うのはAであり,Yの責任は副次的なものであること,離婚の原因は不貞行為だけでないことを認定し,請求額1000万円に対して150万円を認容した。

⑤  東京地判平成25年3月21日

婚姻期間13年,不貞期間1か月(不貞行為は1回),未成熟子2人というケースで,XがAの反対を押し切って複数の借金をしたり,勤務先を退職したことも婚姻関係破綻の原因であると認定し,請求額1000万円に対して慰謝料80万円を認容した。

このように,裁判例では,婚姻期間の長短,婚姻関係破綻の有無,婚姻生活の状況,不貞期間,不貞行為の態様,不貞行為の主導性,未成年子の有無,請求者側の落ち度の有無などの諸要素が考慮されて,慰謝料額が決められており,画一的な基準で決められているわけではありません。この点は,裁判前に弁護士が介入して交渉等を行う場合も同様ですので,ご相談時に様々な事情を確認させていただく必要があります。

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